投資信託を選ぶ基準| 週刊朝日の見解は妥当なものか?

週刊朝日に「ブロガーが選んだ『本当にいい投信トップ10』」という記事が掲載されていたのだそうです。1 ネットでも転載されています。

「いい投資信託ベスト10」もちょっと気になるのですが、この記事で個人的に特に気になったのは、投資信託を選ぶ時の基準を挙げている点です。週刊朝日が考える投資信託購入のポイントと言うことですね。

理にかなったチェックポイントになっているのでしょうか

このポイントはどの程度理にかなっているのでしょうか。また、実用性はあるのでしょうか。ちょっと検証してみましょう。

まず、該当部分を引用してみましょう。

取材を総合すると、最低限の選ぶポイントとして、(1)新しくつくられた投信ではない(2)運用の期間が無期限(3)販売手数料が無料もしくは固定(4)分配金を全額投信に回している(5)少額から自動積み立てができることだ。

取材の結果、この5つが投資信託を選ぶ上では重要なポイントになるという見解ですね。それでは、この一つ一つについて、本当に選ぶ際の重要なポイントなのか考えてみましょう。

(1)新しくつくられた投信ではない

新しい投資信託よりも、ある程度運用を重ねた投資信託の方が良いという判断ですね。確かに、こういう意見は、私自身もどこかで聞いたことがあるようなモノです。

実際この基準は、アクティブ運用の投資信託に関しては、ある程度は理解できるかなあ。

新しく生まれた投資信託でも、2年とか3年とかの間に償還されてしまうことがあります。償還されにくい投資信託を選ぶには、投資信託の純資産額にある程度の規模が必要です。そしてある程度規模が大きい投資信託という基準で選ぶと、必然的に古いものになりやすいでしょう。2

もっとも、インデックスファンドに関しては、この限りではないでしょけどね。まともな条件を設定したインデックスファンドなら、それほど規模が小さくなることも無いはずです。ですから、そもそも償還はされにくいと考えて良いでしょうから。

ということで、償還されにくい投資信託を選ぶという意味なら、「新しくつくられた投信ではない」という基準はある程度納得できます。ただ、「純資産総額が大きい投資信託」という基準の方がより優れているとは思います。

ただ、「新しくつくられた投信ではない」という基準が違う意味合いだと、話は違ってきます。例えば、「歴史がある投資信託だとファンドマネージャーの力量が分かるから、古い方が良い」というような理由だと、ちょっと賛同できません。

ファンドマネージャーの力量なんて、数年単位で判断するのは難しいはずです。また、歴史がある投資信託だと、途中でファンドマネージャーが変わっていることもありえますからね。

ということで、しょっぱなから、「ちょっと微妙な基準」だという結論になってしまいました。

(2)運用の期間が無期限

これは何を言いたいのでしょうか。ちょっと分かりにくいですね。おそらく、償還期限が決まっていない投資信託を選べということだと思うのですが。

投資信託には、運用の期間をはじめから決めて、運用を開始するものがあります。「5年後に償還します」というようなルールをはじめから決めているのです。

そういう投資信託を選ぶのは、確かに、一般的には良くないでしょう。そもそも長期投資の原則に反しますからね。

ただ、そもそも最近の投資信託は、運用の期間は無期限として設定されているものが多いです。あるいは、償還日が決まっているものでも、延長できるという規定がついている事が多いです。ですから、特に選ばなくても「運用の期間が無期限」の投資信託は選べてしまいます。

投資信託の償還に関しては、本当の問題は違うところにあります。実は、償還期限が設定されていないにも関わらず、ほとんどの投資信託は比較的短期間で償還されてしまうのです。これこそが問題です。「運用の期間が無期限」だと思って買ったのに、実はそうではないことが多いわけです。

本来はこれを避けるためにどうしたらいいかを考えるべきでしょう。こうやって考えると、2つ目のポイントはあまり意味が無いと考えて良さそうです。

ちなみに、償還されにくい投資信託はどんなものかというと、上にも書いたように純資産総額が大きい投資信託です。規模が大きい投資信託は儲かりますから、投資信託会社なども継続させたいと考えるわけです。

(3)販売手数料が無料もしくは固定

販売手数料というのは、文字通り、投資信託を買うときに金融機関に支払う手数料です。その手数料が「無料もしくは固定」のものが良いということですね。

率直に言って意味が分からないのは、販売手数料が「固定」という部分です。これは投資額に拠らずに固定されているという意味でしょうか。

そんな投資信託なんてあるのかな。あまり一般的でないので、ちょっとよくわかりません。

ちなみに販売手数料というのは、購入金額に対して2%とか3%といった具合に設定されています。販売手数料が3%だったら、100万円分の投資信託を買ったら、3万円が手数料として取られるといった具合ですね。

そして一部の投資信託は、それが無料に設定されています。

どうせなら販売手数料が無料であるものを選んだ方が良いという意見は納得できます。でも、投資信託選びの重要ポイントとして挙げるべきかといわれるとちょっと疑問です。

なぜかというと、投資信託には販売手数料よりも重要な手数料があるからです。「信託報酬」といいます。

一般的には、長期投資をする場合、販売手数料よりも信託報酬の方がかかる費用は大きくなります。ですから、販売手数料を記事する前に信託報酬を気にするべきなんですよね。もちろん、販売手数料がゼロなら、それに越したことは無いのですけどね。

ということで、この基準は不適切です。少なくとも、「信託報酬が安いところにする」という基準が無いのはいただけません。それを書いた上でなら、販売手数料云々という話があってもいいとは思いますが。

(4)分配金を全額投信に回している

分配金というのは、簡単に言うと、定期的に投資信託から投資家に戻されるお金のことです。最近は大分減りましたが、一時期は分配金の額を競っている投資信託が多かったです。

でも分配金って、結局は投資信託から自分のお金が戻っているだけなんですよね。別に有利でも何でもありません。というか、所得税がかかることがあるので、分配金はそもそも不利な仕組みなのです。

長期的に大きく資産を増やすには、分配金を自分の懐に入れるのではなく、再び投資信託に戻す方が良いとされています。それを踏まえての「分配金を全額投信に回している」という書き方なのでしょう。

でも、分配金は所得税がかかることがあります。ですから、再投資云々の前に、分配金が無い投資信託を選んだ方が良いんですよね。

分配金なんて出している時点で、投資信託としてどうなのかという疑問があります。ですから、この基準もちょっと違うかなという印象です。

あえて書くなら、「分配金を出していない投資信託がベスト。分配金を出すのなら、再投資にまわすことが出来る投資信託で」くらいの書きかたかな。

(5)少額から自動積み立てができること

最後の基準が「少額から自動積み立てができること」とあります。でも、これは、はっきり言って滅茶苦茶です。

なぜなら多くの場合、積立投資が出来るかどうかは投資信託の事情ではないからです。売買をする金融機関が積立投資に対応しているかどうかが重要なのです。ですから同じ投資信託でも、金融機関によって積み立てが出来たり出来なかったりします。

率直に言って、こんなことを書いている時点で、真面目に調べたのかどうかかなり疑わしく感じます。ちょっと不愉快ですらあります。誰か分かる人にチェックしてもらわなかったのでしょうか。

もう一つ言うと、積み立てが出来るかどうかは、投資信託を選ぶ上で決定的な要素ではないという考え方も出来るでしょう。

例えば、手数料で投資信託を選ぶと、ETF というタイプの投資信託を選ぶことになるはずです。このETF という投資信託は、銀行などでも扱っている一般の投資信託とは異なります。いくつか異なる点があるのですが、ここで指摘したいのは、通常は積み立てが出来ないということです。

積み立てが出来ないことを理由にETF を外してしまったら、はっきり言ってもったいないです。というか、愚行以外のなにものでもありません。投資に詳しい人であれば在るほど、強く勧める投資信託だからです。

ということで、二重三重の意味で、最後のポイントは合理的ではありません。

週刊朝日の記者の真面目さを疑います

ここまで書いてきたように、週刊朝日の示す基準はちょっと理解に苦しむものが多いです。「取材を総合すると」なんて書き方をしていますが、本当に取材をしたのでしょうか。話を聞く対象が偏っていなかったでしょうか。かなり疑問が残ります。

率直に言って、この記事に書かれたことを真に受けて投資信託を選んだとしたら、ちょっとかわいそうです。それなりの発行部数がある雑誌でしょうから、そういう人もいそうですよね。かわいそうに。

記者の方は、もう少し勉強してください。


初心者のための投資信託の選び方
  1. ブロガーが選んだ「本当にいい投信トップ10」(週刊朝日)2014年4月25日号 []
  2. ちなみに、償還というのは、投資信託の資産を売り払ってお金を投資家に戻すことを言います。 []

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ETF を選ぶ人は手数料にこだわっている人が多いはずです。もしそうなら、証券会社に支払う売買手数料にもこだわるべきですよね。大手証券会社の窓口なんかで買ったら、手数料が高くなって本末転倒です。

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