このサイトでも繰り返し書いていますが、毎月分配型は問題が多い仕組みです。
そもそも分配金と言うのは、投資信託が運用目的で保有している金融商品を解約して、そのお金を分配金として投資家に渡す仕組みです。ですから結局のところ、投資家にとっては、運用するために預けておいたお金が戻って来たに過ぎません。自分から運用しているお金を減らしているに過ぎないのです。
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毎月分配は元本を削って分配しているに過ぎない
多くの人は、投資信託を運用し利益が出たから分配されると思っているようです。それなら確かに、まだ理屈が通ります。
しかし、毎月分配型の場合は、利益以上に分配をしている場合がほとんどです。利益が出ていないのに分配すようなケースだって少なくありません。運用資金を削ってお金を投資家に戻しているだけの、馬鹿馬鹿しい仕組みなのです。
年金などのように定期的にお金を受け取りたいと言うニーズがあれば、毎月分配型を選ぶのも分からないではありません。ただ、それ以外のケースでは、本当に意味が分からない仕組みです。
何故だか人気の毎月分配型
しかし、毎月分配型というのは、人気がある仕組みなのは間違いありません。純資産総額の上位の投資信託には、毎月分配型の投資信託が数多く入っています。
個人的には、人気があると言うよりも、金融機関が売りやすい仕組みなのではないかと思っています。銀行などは、分配金を利息のようなものと説明することも多いようです。そして、銀行の利息と比較すれば、分配金の方が数十倍あるいは数百倍大きな額なのです。
毎月分配型の投資信託が、夢のような金融商品に見える人も少なくないでしょう。そう思わせたら、売るのは簡単ですよね。
分配金を増やすと契約が増える
ちなみに、投資信託というのは、毎月分配にすると契約が増えるようです。
これを書いている時点で、みずほ銀行で一番売れているラサール・グローバルREITファンドという投資信託があります。この投資信託の純資産総額と基準価額の推移を見ていると、分配金を増やし始めた時期に純資産総額が増えているのが見て取れます。
このグラフを見れば一目瞭然ですね。純資産総額が増え始めた2009年あたりから、「基準価額」と「分配金込み基準価額1 」の乖離が突然大きくなっています。明らかにグラフの形が異なっていますよね。
何でこんなことがおこっているかと言うと、このあたりから分配の方針を変えているのでしょう。そうしない限りは、こんなグラフになるはずがありません。
それ以前はどのような分配方針だったのかはわかりません。それでも、「基準価額」と「分配金込み基準価額」の乖離の小ささから想像するに、常識的な範囲の分配金しか出していなかったのでしょう。
それが、2009年上がりを期に、元本を削って分配をするようになっていったわけです。で、それにつれて、契約も増えたという流れです。
グラフを良く見てみると、2つのグラフの形が明確に代わってしばらくしてから、純資産総額が急激に増え始めています。このことからも、分配方針が契約数に影響を与えたと考えるのが自然でしょう。
投資信託に投資する投資家というのが、分配に簡単に釣られるということが良く分かる事例だと思います。
毎月分配にすると契約が増えると言う例をもう一つ
上の例だけだと、分配方針の変更と売り上げが増えたタイミングが近かったのは偶然だと感じる人もいらっしゃるでしょう。リーマンショックから回復するタイミングで契約が増えたと言えないこともないからです。
そこで、分配方針と契約の取りやすさの関係を表す事例を、もう一つご紹介しましょう。
グローバル・ソブリン・オープンと言う国際投信の投資信託があります。この投資信託は、かつて日本で一番の純資産総額を誇っていました。今でも、それなりに大きい投資信託です。
実は、このグローバル・ソブリン・オープンは、分配方針によって何種類かに分けられているのです。具体的には、毎月決算型、3ヶ月決算型、1年決算型などと言った感じです。
しかし、圧倒的に契約が多いのは、毎月決算型です。これを書いている時点だと、純資産総額は約1兆円あります。それに対して、純資産総額が2番目に多いのが3ヶ月決算型ですが、この投資信託の純資産総額は600億円程度しかないのです。
毎月決算型か3ヶ月決算型かで、20倍近い規模の差が生まれるわけです。しかも、投資信託の設定日は全く同じなので、運用開始からの期間による有利不利もありません。
とにかく、日本人は、毎月分散型が大好きなのです。と言うか、正確に書くと、金融機関が毎月分配型をすすめてくると、ホイホイと契約してしまうのです。
投資家の側にも問題があるのか?
個人的には、元本を削ってまで毎月分配すると言うスタイルは大嫌いです。分配金が利息か何かのように誤解させる営業手法も問題だと思っています。
ただ、これだけ分かりやすく契約が増えると、売る側の毎月分配型の投資信託を売りたくなる気持ちもわからないではありません。金融機関は営利企業ですから、顧客の利益よりも、まずは自分たちの利益を優先させないといけないでしょうからね。
ですからこんな例を見てしまうと、毎月分配にしただけで簡単に契約してしまう投資家に、不安を覚えます。ただ分配方針が変わっただけで、中身が何か変わったわけではないはずなのですけどね。何でコロっと言ってしまうのでしょうか。
投資信託と言うのは、投資経験が少ない人でも気楽にはじめられるのがメリットとされています。しかし、金融機関で勧められるがままに毎月分配型の投資信託を契約している感じを見ていると、ちょっと投資の初心者にはすすめられそうにありません。
毎月分配型の投資信託を買うくらいなら、個人向け国債でも買っておいたほうが遥かにましでしょう。そんなふうにすら思ってしまいます。
追記:毎月分配型の投資信託は金融庁からもダメ出しされた模様
この記事を書いたのが2014年10月でしたが、当時と比べると毎月分配型投資信託の人気はだいぶ無くなったように感じます。多くのサイトなどで叩かれたので、さすがに買ってはいけない商品だという認識も広がったのでしょうか。
それでも、マネー雑誌の特集などで取り上げられることがいまだにあるようです。これだけ情報が転がっている時代ですから、それでも選ぶ人は本人の資質の問題なのでしょうね。もう、好きにしてくださいという感じです。自助努力が出来ない人は、おそらく投資には向きません。
さて、悪評が広がってきた毎月分散型の投信ですが、実は金融庁にまでダメ出しをされているようです。「平成27事務年度版 金融レポート」というレポートの中で、酷評されているのだとか。詳しい内容はレポートを読んでいただくか、ダイヤモンドオンラインの「金融庁がダメ出しする運用商品ワースト3」2 というコラムをご覧ください。
それにしても、金融庁にここまで言われる商品を積極的に勧めるなんて、マネー雑誌は何を考えているのでしょうか。金融機関の利益を最優先に編集されていると言われても、反論のしようが無いと思うのですが。
- 「分配金込み基準価額は、分配金(税引前)を再投資したものを表示」しているのだそうです [↩]
- 金融庁がダメ出しする運用商品ワースト3(山崎 元:経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員)
2016.9.21 ダイヤモンドオンライン [↩]
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