朝日新聞の記事によると、投資信託の資産残高が100兆円を突破したそうです。資産残高が100兆円を超えたというのは、要するに、投資信託が運用資産の時価評価が100兆円を超えたという事ですね。1
ちなみに、Yahoo!ニュースに載っていたグラフは、次のような感じです。4年ほど前には60兆円前後だったのが、一気に100兆円を超える水準にまで増えたのがわかります。
資産残高はどうして増えた?
資産残高を増やすには主に2つの方法があります。1つは新規の契約を取ることです。契約を増えれば、当然ですが、新たにお金が入ってきて資産残高が増えることになります。
もう1つの方法が、運用が上手く行くことです。運用が上手く行ったら、当然資産残高も増えるわけですね。
ここ数年で、投資信託の資産残高は急激に増えたのだそうです。今回の急増の要因は、上の2つともが影響していそうです。
まず、株高になりましたから、国内の株式の投資信託は資産残高を増やしています。また、円安になったので、海外の資産に投資している投資信託も、資産残高を増やしているはずです。結果的に運用が上手く行った投資信託が多いということですね。
また、国内の株高を受けて、新たに投資信託に投資した人も多かったでしょう。株価が上がってから投資するのは、タイミングとして遅すぎる気もしますけどね。でも、そういう人が多かったのは疑いようがありません。
銀行が投資信託の販売に積極的になったのも、資産残高を増やすのに貢献しているようです。銀行の本格参入により、今まで投資信託に無縁だった層が、投資信託に投資するようになりました。
さらに言うと、NISA の影響もあるのでしょうね。NISA をきっかけに投資信託に投資し始めた人だって、確実にいるはずです。もっとも、NISA に関しては、予想されていた程はうまく行っていないようですけど。
全ての投資信託が順調というわけでは無い
投資信託全体で100兆円規模と聞くと、投資信託関連のビジネスはかなり儲かっているという印象を受けますよね。でも実際には、必ずしもそうとは限りません。というのも、運用資産のかなりの部分は一部の大型の投資信託に集まっているからです。全体の資産が増えたとしても、不人気な投資信託は不人気のままなのです。
これを理解するために、純資産総額が大きい投資信託を上から10挙げ、その純資産総額を足し合わせてみましょう。そうすることで、規模の大きな投資信託にお金が集まっているのが分かると思います。
まず、投資信託協会のサイトから、純資産総額が大きい順に投資信託を10挙げてみます。下の数字が、純資産総額です。
- MRF /野村アセットマネジメント
52,504.14億円 - 日経225連動型上場投資信託(ETF)/野村アセットマネジメント
30,331.22億円 - TOPIX連動型上場投資信託(ETF)/野村アセットマネジメント
27,180.31億円 - 日興MRF/日興アセットマネジメント
24,800.27億円 - ダイワMRF/大和証券投資信託委託
20,101.73億円 - 上場インデックスファンド225(ETF)/日興アセットマネジメント
14,192.88億円 - 海外不動産 新光US-REITオープン/新光投信株式会社
13,864.88億円 - ダイワ上場投信-日経225(ETF)/大和証券投資信託委託
13,634.28億円 - ダイワ上場投信-トピックス(ETF)/大和証券投資信託委託
13,317.60億円 - ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)/日興アセットマネジメント
12,812.91億円
一番大きい野村のMRF は5兆円以上の純資産を持っています。ということは、全ての投資信託が持つ純資産の5%以上を、野村のMRF が占めているということです。。
さて、これらの10ファンドの純資産総額を合計すると、約22兆2740億円になります。つまり上位の10ファンドだけで、全体の4分の1近くの資産を持っている計算になるのです。
ちなみに、日本国内で設定されている投資信託は、5,000を超えます。にもかかわらず、たった10本に4分の1近くを取られているわけです。
儲かっていない投資信託も多いはず
人件費がかかることを考えると、金融機関が投資信託で儲けるには、それなりの規模にしないといけません。投資信託の手数料は資産の時価総額に対して年数パーセント程度なので、規模が小さい投資信託はたいした売り上げが無いのです。
ですから現実には、黒字になる規模を下回るような投資信託が相当多いはずです。一部の投資信託が大きく儲けることで、全体としてはプラスにしているわけですね。
ちなみに、儲かっていない投資信託はどうなってしまうかというと、繰上償還されることになります。簡単に言うと、投資信託自体を潰してしまうのです。
実際、投資信託の多くは、数年程度で繰上償還されなくなってしまう事が多いです。
ラップ口座の成長スピードは相当早い
投資信託の次に来ると考えられている金融商品の1つに、ラップ口座という商品があります。
ラップ口座というのは、簡単に言うと、金融機関にお金を渡して運用を任せてしまうという商品です。金融機関との間で運用方針などの確認などは行いますが、細かい部分は金融機関にお任せという形になります。
投資信託に金融機関任せという一面はありますが、投資信託以上に金融機関任せな商品と言えるでしょう。
さて、このラップ口座ですが、金融機関は積極的に販売しているようです。実際、急速に規模が大きくなっているようですね。
具体的には、2015年3月末時点の契約残高が3兆8973億円もあるのです。2 これは、前年度と比べ183.23%も増えた事になります。たった1年で、3倍近くになったわけですね。
投資信託と比べると、まだ4%にも満たない規模ではあります。ただ、万人向けの投資信託に比べて、ラップ口座はあるていどの富裕層にターゲットを絞っています。それで4兆円近い規模になったというのは、興味深い点です。もちろん、前年に比べて急激に規模が拡大したのも、注目すべきところです。
ラップ口座が投資信託と似ている部分があるということは、今後は投資信託からラップ口座に移る人も増えるかもしれません。そうなると、投資信託の資産残高の成長に与える影響は大きそうです。かなり客を食い合う格好になるのでは無いでしょうか。
- 投資信託の資産残高、100兆円突破 株高と円安で利益
朝日新聞デジタル 2015年6月7日 [↩] - 「ラップ口座」契約残高、2.8倍に拡大–2014年3月末、3.8兆円
マイナビニュース 2015年6月4日 [↩]
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投資信託では金融機関はどこを使う?
投資信託を使って資産運用をするならSBI証券がおすすめです。取り扱い本数が2,500本以上とかなり多く、顧客満足度も高い証券会社だからです。
投資信託の積立をして長期的な資産形成をする場合も、やっぱりSBI証券が良いでしょう。銀行や信用金庫からの自動引き落しに対応していて、とても便利です。月々100円から積立てられるのもメリットですね。
ETF を選ぶ人は手数料にこだわっている人が多いはずです。もしそうなら、証券会社に支払う売買手数料にもこだわるべきですよね。大手証券会社の窓口なんかで買ったら、手数料が高くなって本末転倒です。
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